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2020.06.26
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伊勢。神の国からあの歴史の舞台へ③

名古屋から伊勢にかけての伊勢湾沿いの一帯は、
神々の時代や、そして天下を争った武士たちの時代に
数々の物語を生み、日本の歴史を形づくってきた地。
いまに伝わり、脈々と生き続けるその遺産を訪ねよう。
背後に息づくドラマと文化に思いを馳せて。
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  • Michiyo Nishiuehara
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  • Seiichi Saito
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もうひとつの三種の神器、草薙神剣がここに

  • 特急列車で1時間少々。伊勢と名古屋は意外に近い。名古屋は大都会であるとともに、戦国時代、錚々(そうそう)たる武将を生んで天下取りの舞台になった歴史の地。しかしそれよりはるか昔から、熱田神宮が存在する地として知られていた。
  • 物語は日本武尊(やまとたけるのみこと)の昔に遡る。東征の帰途、この地の尾張氏の媛(ひめ)を娶(めと)った日本武尊は、三種の神器のひとつ、草薙神剣を媛に預けて亡くなってしまう。そこで剣を熱田に祀ったのが熱田神宮の始まりだという。
  • 祭神の熱田大神は、草薙神剣を御霊代とする天照大神のこと。本殿は伊勢内宮の御正殿を譲り受けたもので、ほぼ同様の神明造り。

  • 5月1日には神楽殿前庭で舞楽神事が行われる。

  • 大都会のただ中にあって、そこは深い森に抱かれていた。足を踏み入れた参道は緑のトンネルで、地面に落ちる木漏れ日が美しい。境内には織田信長が奉納した「信長塀」がいまも残る。実は熱田神宮は武士と非常に縁が深い。鎌倉幕府を開いた武家の棟梁、源頼朝は、父義朝と熱田の大宮司の娘(由良御前)との間に生まれた。以後、熱田神宮は、時代時代の武家政権の崇敬と庇護を受けてきた。
  • 境内には信長塀や名古屋最古の石橋「二十五丁橋」、高さ8mの大燈篭など見どころ多数。

  • 庶民にも愛され、名古屋人なら神社といえば「熱田さま」。格式の割に親しみやすく、境内には茶店もある。ひと休みしていただいた、熱田名物「きよめ餅」。ひと口サイズでやさしい甘さ、土産にもよさそうだ。売店にもあるが、せっかくだから神宮のすぐそばにある「きよめ餅総本家」まで、足を運ぼうか……。
  • ふんわり柔らか熱田名物 きよめ餅総本家
    江戸の中ごろに境内に「きよめ茶屋」があり、まずここで茶を一服して疲れを休め、姿を正して参拝するのが習わしだった。この茶屋にちなんでつくられたのが「きよめ餅」。ていねいに炊き上げたこしあんを、羽二重餅でくるんだ銘菓で、栗入りや春にはさくらきよめも売り出される。

きよめ餅総本家

  • 名古屋市熱田区神宮3-7-21
    TEL:052-681-6161
    www.kiyome.net
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。

熱田神宮

  • 名古屋市熱田区神宮1-1-1
    TEL:052-671-4151
    www.atsutajingu.or.jp
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。

  • 名古屋にはほかにも名高い寺社は数多い。たとえば大須には家康の命で岐阜から移転した大須観音、織田家菩提寺の万松寺と、武将ゆかりの寺社がある。信長が父の位牌に抹香を投げつけた事件は、万松寺が舞台。いまは商店街にあるハイテク寺院で、時間になると壁からからくり人形が出て動き出す。

  • 幟と大提灯がシンボル 大須観音

  • 正式な名は「北野山真福寺寶生院」だが、大須観音として広く親しまれている。元は岐阜県の大須に創建されたが、名古屋築城の折に家康の命でここに移転した。大須観音は古くから貴重な書籍を所蔵しているため、移転は水害から守ることが目的だったともいわれる。

大須観音

  • 名古屋市中区大須2-21-47
    TEL:052-231-6525
    www.osu-kannon.jp
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。

  • 由緒ある織田家の菩提寺 亀岳林 万松寺

  • 織田信長の父、信秀が織田家の菩提寺として1540年に開いた。寺に祀られている身代不動明王は、信長と加藤清正ゆかりのもの。大須の商店街に面した地下1階、地上5階の現代風寺院で、時間になるとからくり人形が作動。「に~ん~げ~ん五十年~」と有名な敦盛の一節が響き渡る。

亀岳林 万松寺

  • 名古屋市中区大須3-29-12
    TEL:052-262-0735
    www.banshoji.or.jp
    ※Webサイトで最新情報をご確認の上、お出かけください。

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