もともとは翻訳家の仕事をされていた坂本裕子さん。発酵をテーマに、さまざまな商品作りに取り組んでいる。 - 毎日パソコンと向き合い、1日誰とも話をしないこともある生活にちょっと思うところがあって、地域おこし協力隊に応募したという。初めて丹波山村を訪れたときの印象は「人がいない、誰にも会わない」と笑うが、夕暮れ時の空、山と川、畑で見る朝日と本当に美しい自然に囲まれて移り住んでよかったなと実感するそうだ。
丹波山特産の野菜を用いて、ピクルスなどに加工。赤芋はじゃがいもだけど、里芋のようにムチッとした食感が特徴だそう。 - 発酵食品を地域おこしのテーマにしている彼女は、味噌作りと村の野菜をつかった加工食品の製造販売が現在の主な活動。「かつて、味噌を作っていたおばあちゃんが辞めてしまったので、復活させようと。丹波山村産の大豆も使いたいから、自然と畑仕事も手がけることに。また村の伝統野菜である赤芋(じゃがいも)も村民を訪ね歩き在来種を分けてもらって作付けし、ピクルスに。受け継がれてきた伝統や食文化は途絶えさせちゃいけないなって思ったんです。」
坂本さんが味噌作りのために、丹波山村の大豆を育てている畑にて。 森林インストラクターとしても活躍する佐藤駿一さん。丹波山村の森を知り尽くし、興味深い話をいろいろしてくれた。 - 「原材料から作るんですから、こだわりの職人みたいでしょ(笑)」と、横で聞いていた佐藤駿一さんも実は林業担当なのだが、畑仕事を手伝っているそうだ。「僕は学生時代から林業に関わっていて、自分自身の視野を広げて林業の世界を極めたいと勉強の意味で移住しました。
- 以前からこの一帯も知っていたし、山登りが好きで全国の山々を見ているから、丹波山の風景は格別という印象は受けなかったです。見慣れているからかな。でも山に囲まれているから夏でも涼しい。それなのに地盤が岩だから土砂崩れなどの災害もほぼ皆無で安心して暮らせる。静かだし、昔の日本の田舎のよさを兼ね備えている魅力的な地ですよ」。
- 「人が温かいんです。ちょっと話を聞きに家を訪ねると、お茶飲んでけ、あれ食べろと。おかげで私は移住して太りました(笑)。 野菜ももらえるし、狩猟も盛んだから初めて鹿の心臓も食べました。おいしいんですよ」。「穴熊やまむしもね。その時期の旬のものを味わえる喜びは大きいよね」。そういって、お二人はいろいろな村の美点を話してくれた。
- 中でも私がうらやましいなと感動したのは、昔からの暮らしが根付いているからお隣同士、顔の見える環境が普通だということ。スーパーまでは車で1時間ほど。車のない人は声をかければ、人づてに誰かが連れてってあげる。もし道中、車が故障しても連絡すれば誰かが必ず助けに来てくれる、そんな優しさにあふれたエピソードをいくつも聞いた。人と人が支え合って生きていくことの大切さ。我々日本人が絶対に失ってはならないもの。それが、ここ丹波山村には脈々と受け継がれている。
- 次回、丹波山村の美味しいものをご紹介します。
TRAVEL
2019.11.08
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丹波山村
自然と人の営みが紡いできた里山の姿をいまに残す Vol.2
深い緑と清らかな渓流が織りなす大自然の風景が魅力の丹波山村。その美景の虜になり、四季折々再訪するカメラマンやライダーなど熱烈なファンも少なくない。村を元気にして、さまざまな美点を発信すべく、地域おこし協力隊(全国の各自治体で行なっている制度)として移住したお二人に話を伺った。
- TEXT
- Yuko Yoshiura
- PHOTO
- Shinsuke Sugino
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