鈴木康広、二子玉川ライズ スタジオ & ホール で待望の個展
《足元の展望台》2014年/作品に乗る鈴木康広氏 - Bunkamura ザ・ミュージアムが二子玉川にて開催している『鈴木康広展 ただ今、発見しています。』は、話題のアーティスト鈴木康広氏による都内初の個展。
身の周りに存在する何気ないものごとに注目し、小さな気付きを独自の視点で捉えなおす作品を制作する鈴木康広氏。
近年は国際コンクール「ニューヨーク・フェスティバル」のエンターテイメント番組:子ども・青年賞部門金賞と、「プリ・ジュネス 2024」最優秀賞をW受賞した教育番組NHK Eテレ「みたてるふぉーぜ」で総合指導を務めるなど、国内外で高い評価を受けている注目のアーティストだ。
世界初公開の新作と代表作を含む、約50点を展示
- 個展では、世界初公開となる「小さな発見機」をはじめ、代表作「まばたきの葉」や「空気の人」など、約50点の作品が展示されている。
鈴木康広《イメージの虫眼鏡:スケッチの庭》2024年 鈴木康広《まばたき証明写真》2011年/まばたきした瞬間にシャッターが切られる。 - 一歩引いて鑑賞する作品だけでなく、ものごとの見方を変えるだけで新しい発見が生まれる、体験型の作品も多数登場する。発見やひらめきに満ちた作品を通じて、鑑賞者に新たな視点を提供する、現在進行形の展示が特徴の個展だ。
聞き間違いから生まれた新作「小さな発見機」
- 本展のサブタイトルが「ただ今、発見しています。」になったきっかけは、鈴木康広氏の「聞き間違い」。
鈴木康広氏が新幹線のチケットを買う時、発券機から自動音声で流れてきたアナウンス「ただ今、発券しています」を「発見」と聞き間違えてしまったのがきっかけとなり、名付けられたのだそう。
ここからは、貴重なトークショーの内容と合わせて、目玉作品を紹介していこう。
「新幹線の切符を購入すると、発券中に『ただいま発券しています』と流れるのですが、『ただいま発見しています』とも聞こえることに気付きました。このような言葉遊びが僕の感覚ではよく起きて、『発見しています』の表現に違和感を覚えたんです」
「発見する」のではなく「発見し続けている」という捉え方をし、新しい発見の可能性を探り続けるのが重要だと語る鈴木康広氏は、以下のように続けた。
「発見を言葉に置き換えられないと忘れてしまったり、意識できなかったりして消えてしまうことがあります。個人が発見できる瞬間や感受性は、人間にとって必要な機能で、その小さな喜びが次にどう転がるかはわかりませんよね。僕は小さな発見を大切にし、喜びがどのように広がっていくのかを見守るのが重要だと考えています」 鈴木康広《小さな発見機》2024年/(※体験料は¥400)鈴木氏が本展のために手がけた新作。 液晶画面に現れるのは、鈴木氏が書き溜めてきたスケッチ。 液晶の発券ボタンを押すと…… “発見中”の切符が出てくる。 - マイクロディスカバリーチケットと名付けられたこの切符には、“発見”した時刻が刻まれ、来場者に発行される。チケットは世界に1枚だけのもので、それぞれの人の中に発見の切符があるのだと可視化してくれる作品だ。
「例えば『科学的な発見』は価値が明らかで、評価されやすいものです。しかし、人類の『発見』にはもっと多様なバリエーションがあるのではないかと思っています」 鈴木康広《イメージの虫眼鏡:ファスナーの船》2004年 - 「子どものころから、分からないことや気になることが心に残りやすく、好きだと思っていたものに対して強い疑問を感じていると気付くタイミングがあったんです。子どものころに分からなかったことを理解し前に進む人もいますが、僕はその後ろを遅れながら追いかけてきた感覚があって。僕自身大人であることを自覚しつつ、変わらない部分もあるので、本展覧会では我々大人も子どもたちの見方ができるような、大人と子どもの区別を取り払った展覧会にしたいと思っています」
世界はさまざまな発見で満ちている
鈴木康広《足元の展望台》2014年/大きな足の台に上がると、子どもは少し背伸びした大人の視点に、大人は自分の足元が今よりもっと近くに見えた幼少期の感覚がよみがえる。一段上がるだけで、見慣れた場所の風景も違って見える作品。 - 「《足元の展望台》は、自分の部屋の机や椅子の高さを基に作りました。自分の部屋はもっとも身近な場所ですが、靴底を1センチ変えるだけで視点が変わると気付けるのが、マイクロディスカバリーな視線だと思っています。もしも作品の周りに無数の見えない台のようなものがあったら、世界がどのように見えるのかを考えさせてくれます」
鈴木康広《自然を測るメトロノーム》2017年 - 「展覧会の際には、アンケートの形で感想を書いてもらうことが多いんです。訪れた方に『印象に残った作品や思い出したことをなんでもいいので書いてください』とお願いしています。作品に対する具体的な感想や評価ではなく、鑑賞した皆さんの中で何が起こったのかを聞くことの方が私には嬉しいですね」
作品のコンセプトやエピソード、話した言葉から抽出された透明な足跡型のメッセージ。会場中の床に貼られており、リアルなアーティストの声が伺える。 -
「世界はさまざまな発見の種で満ちていて、見方をチェンジすることで気が付くような展覧会を作りたい」と話す鈴木康広氏。
鈴木康広氏の「発見」と「見立て」に満ちた会場は、作品と鑑賞者、鑑賞者同士でコミュニケーションをとりながら、子どもから大人まで楽しめる空間となっていた。
個展は、2024年9月1日(日)まで二子玉川ライズ スタジオ & ホールで開催中。鈴木康広の独自の視点と発見の連鎖を体験しに、訪れてみては?
「鈴木康広展 ただ今、発見しています。」
- 開催期間:2024年7月20日(土)~9月1日(日)※休館日なし
開場時間:10:00-19:00
※毎週土曜日は10:00-20:00
※最終入場は各閉場の30分前まで
会場:二子玉川ライズ スタジオ & ホール(東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズ)
アクセス
主催:Bunkamura
食を通して“発見”を体験する
コラボレーションメニュー「森のホタテ」¥1,950 - 個展の後は、すぐそばにある二子玉川エクセルホテル東急 30階「The 30th Dining Bar」にて、個展に併せたコラボレーションメニュー「森のホタテ」を楽しんでみてはいかがだろうか。
本物のホタテと、ホタテの貝柱のようにカットしたエリンギをバターでソテーした「森のホタテ」。トップにはホタテを裏ごししてシート状にしたパリパリのホタテチップス、土台には「森の土」をイメージしたジャガイモのピューレが敷かれており、料理全体が森に見立てられている面白い一品だ。
そっくりな見た目のホタテとエリンギ、ホタテエキスを使用したソース、ポルチーニが効いた濃厚なジャガイモピューレの組み合わせは、森の中を探索しているようなマリアージュが楽しめる。
食べ進めながら「どれがエリンギでどれがホタテなのか」を発見する遊び心は、「鈴木康広展」のテーマでもある「気付き」や「発見」と近い体験になるだろう。
コラボレーションメニュー「森のホタテ」
-
場所:二子玉川エクセルホテル東急 30階 The 30th Dining Bar
期間:2024年7月20日(土)~ 9月1日(日)
提供時間:17:00~21:00(L.O.20:00) ※ディナータイムのみ
料金:¥1,950
www.tokyuhotels.co.jp/futako-e/information/118608/