千本格子のたたずまいによく似合う錫色の静けさ
- 千本格子の家々と石畳が調和し、江戸の風情が残る高岡市金屋町。通りの半ばに差しかかると、お目当ての「大寺幸八郎商店」が見えてきた。
- 町の始まりは、慶長14年(1609年)、加賀藩主の前田利長が領内の鋳物師7名をこの地に呼び寄せたことから。職人のものづくりの魂は、今も町のそこここに息づいている。
- 「大寺幸八郎商店」の初代が鋳物工場を始めたのは、万延元年(1860年)。現在は金属工芸品の卸と小売を生業として、錫を活かしたアクセサリーやテーブルウェア、鋳物技術が生きる干支小物などを扱う。錫アクセサリーの体験教室、古き建具を鑑賞できる喫茶コーナーも人気だ。
- 店を仕切る大寺康太さんは、錫の魅力を愛おしそうに、こう話す。
- 「錫は錆びにくく、色が変化しにくいので、昔から人が口にする酒器や食器に使われてきました。やわらかいので、体験教室では手の力だけで好きな形にしてもらっています。印を押したり、麻布と圧延機にかけて模様をつけるのも簡単なんですよ」
康太さんの母、雅子さんが教えてくれる錫アクセサリーの体験教室。イヤリングや指輪、ブレスレットなど、世界でひとつのアクセサリーが手軽につくれる。 - そんな錫の魅力をより現代的な工芸として見せてくれるのが、本店の隣にあるギャラリー「博選堂FUTATABI」だ。「kohachiro」のブランド名で、オリジナルの錫アクセサリーを手がける康太さんの妻、桂さんの工房も兼ねている。
- 「錫はやわらかい金属だけに、溶けて固まった形状や圧延機で潰したときについたテクスチャーが模様に。偶然性が味わいになる唯一無二のアクセサリーができます。肌なじみのよさも、錫ならでは」と桂さん。
工房で新作に取り組む桂さん。錫のやわらかさは、時に大胆なデザインにも。変化する力強さも錫が持つ魅力のひとつ。 やわらかな曲線と光の当たり方で表情が変わる、桂さんがデザイン、制作した錫のアクセサリー。シーズンや年齢を問わず、身につけられる。
桂さんの工房兼ギャラリーの「博選堂FUTATABI」は、大寺家三代目が大正時代に建てたもの。当時の調度品と共に昭和初期まで主力商品だった鋳物なども飾られている。 - 千本格子から差し込むやわらかな陽に照らされて、穏やかに光る錫の落ち着き。手仕事を大切に時を歩んできた金屋町には、錫の静かな色合いがよく似合う。
大寺幸八郎商店
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住所:富山県高岡市金屋町6-9
TEL:0766-25-1911
営業時間:10:00~17:00
休業日:火曜日(祝日は営業)
体験料:錫のアクセサリー体験 1アイテム¥2,500、ブレスレットのみ¥3,500
アクセス:あいの風とやま鉄道「高岡駅」から路線バスにて「金屋」下車、徒歩約1分
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