選書をするのは、大阪にある喫茶店・個人書店の『awaiya books』
- 築約90年の長屋の一角に佇む『awaiya books』。400冊以上の本を取り扱う書店の他、コーヒーや焼き菓子を味わいながら読書や新しい本との出会いを楽しめる喫茶店としても愛されています。
- 店主手作りの本棚が、壁一面天井までびっしり。本好きにはたまらない佇まいです。
そして今回、ホテルで読むのにおすすめの本をご紹介してくれるのは、awaiya books書籍担当・みなもさん。
「言葉になりきらない気持ちや、名前のつかない物ごと=あわい(間)を想ったり、自分自身の静けさを取り戻すことができるような本を選んでいます」
店名の『awaiya(あわいや)』には、人やものの「あいだ」にまなざしをよせる、耳を澄ませるひと時を提供したい、という意味が込められています。日常と旅の“あいだ”にあるホテルだからこそ読みたい本を教えてくれました。
選書1冊目「ポエトリー・ドッグス」著:斉藤倫
- グラスを拭く手がふさふさしている。バーテンダーは、いぬだった。
「このバーでは、詩を、お出ししているのです」
生きることに迷うとき、自分を見失いそうなとき。
本当は、なにを感じているのか。ことばにならない想いを、詩は思い出させてくれる。
今夜も、いぬのマスターのおまかせで。
詩人・斉藤がおくる、詩といまを生きる本。31篇の詩をめぐるストーリーです。
ホテルで自分と向き合う、静かな時間を楽しめる本
- 「まず、マスターが犬という設定がおもしろいですよね。ちょっと現実から浮いた感じがあって、詩に親しみがない人でも物語として読みやすいと思います。
差し出されたときにはすこし遠くに感じる詩も、「マスター」と「ぼく」のやりとりによって解きほぐされ、すこし近づく。31篇の詩をそれぞれに味わいながら、物語の中にもハッとするようなことばが散りばめられていて、それ自体がひとつの詩のような一冊です。
また、“旅先”という日常から離れる束の間、じっくり自分と向き合うのも大人の旅の醍醐味ですよね。そういう意味でもバーという設定はぴったりだと思います。人生に寄り添うことばに触れると、ふっと心がほどけて本来の自分に戻っていく。旅先でふらりとバーに立ち寄るように、いぬのマスターが出してくれる詩を味わってみてはいかがでしょうか」
ポエトリー・ドッグス
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著:斉藤倫
出版社:講談社
awaiyabooks.official.ec/items/72485561
選書2冊目「街と山のあいだ」著:若菜 晃子
- 登山を専門とする出版社・山と渓谷社編集者として、編集者・文筆家として、山を登ってきた思い出と自然の情景を瑞々しく描いた、若菜晃子さん初めての随筆集。
めずらしい鳥の声
ゆれる花 葉先のしずく
いつか一緒に歩いたひとの気配
湿った地面を踏む足の裏
からだをとおりぬける風
山に登ったことはなくても、その風景がありありと浮かぶ。
静かで力づよい文章が束ねられた、山のひかりが降りそそぐ一冊です。
続いていく旅の途中で、見えるもの、感じるものが、変わるかも。
- 「山道に降り注ぐ光、草木の匂い、土を踏む感触、風にゆれる花、突き抜ける空の青さ───。山に登ったことがないのに、その情景が、ばっと目の前にひらける。若菜さんの息づかいが伝わる言葉の選び方、繊細な表現、うねるような力強い文章に衝撃を受けました。読み進めるにつれ、まるで自分も登っているかのような追体験ができるのも、この本のおもしろいところ。
また、「街にいながら、山を想う」感覚に心を打たれました。
あの時の、あの山に想いをはせる。街にいては見られない「今、ひらく花」をこころの中で咲かせる。そんなあたたかくやさしい、どことなく切ない気持ちは、もう会えない人や戻れない過去を想う感覚と似ています。
ベッドから目覚めたときの朝日。友人とのなにげないひと時。雲に見え隠れする夕日。
大人になると変わらない毎日が淡々と続くように感じますが、刻一刻と、私たちも、目の前の風景も変わっていきます。この本を閉じまた新しい旅にでるときには、過ぎ去る風景が尊く感じられるかもしれません」
街と山のあいだ
- 著:若菜 晃子
出版社:アノニマ・スタジオ
awaiyabooks.official.ec/items/36750218
選書3冊目「新しい日の真ん中に」著:児玉 由紀子
- 手帳のような軽やかさでどこへでも携え、どこでも気楽にひらくことができる、児玉由紀子さんの詩集です。
カラフルな紙の色と、温かみのあるイラスト。そして、日常に寄り添うことばたち。
今日を過ごす自分を見守ってくれるような一冊です。
きれいなおいしい水のような、日常に寄り添う詩
- 「初めはこの詩集らしからぬ軽やかな装丁にびっくりしました。でも、これがすごくいい。どこへでも持ち運べて、いつでも開くことができます。カバンに入れて汚れたり折れる心配もありません。軽やかさを携えた、旅にぴったりな詩集です。
なにより児玉さんの詩は、きれいなおいしい水のようで、どんなときも身体にスッと入ってくれると思います。
朝の窓辺で、
満員電車の中で、
喫茶店の椅子で、
散歩道で、
ほろ酔いの夜の街で、
おやすみ、のあと布団の中で、
日常に寄り添う、やさしいことばに満ちている朗らかな詩集です。
詩は、どのページから読んでも、繰り返し読んでもいい。読書の習慣がない人でも読みはじめやすい。だからこそ、ホテルで夕食を待っている間に。シャワーを浴びたあとに。眠りにつくまでの時間に。カーテンから朝日がこぼれるまどろみの朝に。水を飲むように、気軽に読んでほしい。旅のお供にぴったりな一冊です」
新しい日の真ん中に
- いかがでしたか。ホテルでゆったりとくつろぐ束の間、本を携えことばと一緒に旅するひと時を楽しんでみてはいかがでしょうか。
それでは、いってらっしゃい。
awaiya books
- 住所:大阪市福島区海老江2-7-22
アクセス:
JR東西線 海老江駅 2番出口より徒歩5分
阪神電車 野田駅 徒歩10分
大阪メトロ 千日前線 野田阪神駅 徒歩10分
営業時間:月〜土 13:00-17:30 (17:00 L.O.)/日10:30-18:00 (17:30 L.O.)
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