- 「大人の旅」を豊かにするWEBマガジンをご覧のみなさま、はじめまして。
- 私は今年29歳になりました。モデルとして芸能界デビューして15年。
まだまだ自分の理想とする大人にはなれていないのですが…、
大人になることの楽しみの一つは、自分の好きな物がどういう物で、それがどこに行けばあるかわかってくることではないか、と最近思います。 - 何を食べても美味しくて雰囲気のよい小さなビストロだとか、
いつ行っても自分のクローゼットにフィットする洋服が見つかるお店だとか、
お店の方のお勧めが好みにドンピシャなレコードショップだとか。
そういうのは、経験や出会いを重ね大人になるにつれて増えていくものですよね。 - 渋谷Bunkamuraの「ル・シネマ」も私にとってはそんな場所。
- 喧騒の渋谷センター街を抜けた先にある、東急百貨店の裏側、Bunkamura。
今年はちょうど30周年。渋谷という立地で気軽に良質な文化に触れられる、素晴らしい場所です。ギャラリーやミュージアム、コンサートホールも入っていますが、中でも私が頻繁に足を運ぶのは、3階にある映画館「ル・シネマ」。 - ここは2つの上映室をもつミニシアター。品のある内装も素敵ですし、何より独自のこだわりを持って選び抜かれた作品と、映画を深く楽しめる丁寧な展開で、いつ行っても私を満足させてくれます。フランスや欧州映画に強いイメージもありますが、文化的で芸術的で、繊細な作品ばかり。先日も、映画が観たいなぁと作品を決めずにふらっと立ち寄って、「僕たちは希望という名の列車に乗った」を観ました。
- 1956年 冷戦下の東ドイツが舞台。
法律で禁じられている西ドイツのラジオをこっそり聴いた高校生たちは、ハンガリーの動乱で多くの人々が亡くなったことを知る。
「ハンガリーのために2分間、黙祷しよう」 - 授業が始まる前の一人の提案に多数決をとり賛成多数の為、授業の冒頭に実行する。
しかしこれが社会主義国家への反逆とみなされ、首謀者を探すために尋問や密告で追い詰められていくことになってしまう。
この映画はベルリンの壁が建設される5年前。
東ドイツで起こった実話が元になっています。 - 純粋な良心から自分で考えてとった行動が、国家という重圧によって家族や故郷まで奪おうとする。そんな中で信義と友情はどこまで耐えられるのか?
- 高校生役の俳優たちの演技が、演技とは思えないほど素晴らしく、後半はずっと息が詰まる思いでした。自分がもし当事者だったら、こんなにも強く正しくいられるだろうか。それぞれのおかれた家庭環境や、当時の東ドイツの労働環境の描写も見逃せません。社会的かつシリアスですが、タイトルの通り"希望”のある感動作です。
- この作品を撮った監督は、前作では同じ題材ながら相対する視点の作品を撮っています。視点が変われば感じ方も全く違って、現代に置き換えるとまた心に刺さるものがありました。映画から学ぶことは、決して史実だけではありませんね。
- Bunkamura「ル・シネマ」は、スクリーンが高めで、列ごとに段差があって後ろでも見やすいつくりなので、座席は一番後ろが私のお気に入りです。
またこの映画館の良いところはもう一つ、上映作品をとりあげた雑誌や新聞の記事が綺麗にロビーの壁に貼ってあるところ。様々なジャーナリストやライター、文化人のそれぞれの視点で書かれた評論を読んで、より映画について深く考えることができ、上映後このコーナーにはいつも人だかりができています。
- さて、良い映画を観た後は、やはり観た人と感想を語り合ったり、それについて一人で調べたりしたくなるもの。渋谷で静かな穴場はないかという時、見つけたとっておきが渋谷エクセルホテル東急の25階「ア ビエント」。
- 奥はフレンチレストランですが、その手前にお茶やお酒などがいただけるスペースがあるんです。フランス語で美しい眺めという意味の「ベルビュー」と呼ばれているそうです。
渋谷とは思えない静けさ!そして、何よりもこの絶景!
- なんとも優雅なひとときを過ごせます。こんな場所を知っている。
これぞ、大人の楽しみではないでしょうか?
三原勇希コラム「私流アート鑑賞」
三原勇希
- 三原勇希(タレント/キャスター)
1990年4月4日生まれ。大阪府出身。
ティーン向けファッション誌「nicola」でデビューし、tvkテレビ神奈川「sakusaku」4代目MCを務める。その後、様々な音楽番組やNTV「シューイチ」などに出演。現在はJ-WAVE「ROPPONGI PASSION PIT」ナビゲーター、スペースシャワーTV「ヨルジュウ♪」VJでレギュラー出演。音楽、映画、スポーツ、ファッションと多才多趣味を活かし、テレビ・ラジオ・雑誌などでマルチに活躍中。
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