都の食文化を支えた「御食国(みけつくに)」とは
- 御食国とは、古代から平安時代にかけて、海産物や塩などの食料を都に贈り、朝廷の食を支えた土地のこと。現在の福井県にあたる若狭国は、この「御食国」として日本海の幸を都へと届け、その食文化に大きく貢献し続けてきた。山に囲まれた都では、海産物は貴重品。奈良や京にもっとも近い日本海の玄関である若狭の海産物は、「鯖街道」と呼ばれる街道を通じて都へと運ばれていったのだ。都へと続く往来には港、城下町、宿場町が栄え、それに伴って祭礼や芸能、仏教文化が街道沿いのみならず農漁村にまで広がった。その独自の文化は今に受け継がれ、土地に深く息づいている。往時の賑わいを感じさせてくれる鯖街道・熊川宿もそのひとつ。かつての都の味を支えたであろう日本海の幸を舌で感じることができるのだ。
- 若狭からは、かつての商人たちの歩みを辿るように京都へと向かう。人気の観光列車「丹後くろまつ号」の車窓から、由良川橋梁などの日本海の絶景を楽しめば、移動もまた豊かな旅のひとときへと変わるだろう。日本海の松をイメージしたという和モダンな内装も、上質な旅を彩ってくれるはずだ。
由良川橋梁は、京都丹後鉄道きっての絶景スポット。ゆっくりと走行してくれるため、車窓の風景を心ゆくまで満喫できる。
〝土地の幸〟と〝人〟が作り出すおもてなしの宴
- 海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群は、「日本遺産」の第一号認定ストーリーとして全国に知られるようになった。今回提案するのは、この「御食国若狭と鯖街道」をはじめとした3つの日本遺産を訪れるルートだ。
- 旅の始まりである富山の地では、宮大工の鑿(のみ)一本から生まれる華麗にして豪壮な「井波彫刻」と職人たちがつくりあげた街並みに、そして若狭から移動した京都では、約800年に亘って最高級の茶葉を栽培してきた「宇治茶の歴史」に触れることができる。
井波彫刻の職人技が活きる、瑞泉寺の大伽藍(だいがらん)。
- 歴史、風土、そして人々の営みが作り出した文化に触れる旅を彩るのは、やはりその土地ならではの「食」。富山、金沢、京都という、歴史と伝統の地。富山湾の豊かな漁場で獲れる海の幸、加賀や京の、その地だからこそ食べられる野菜など、「うまし物」の魅力は尽きない。その土地ならではの歴史のドラマと、土地の文化を育んだ食材。知と美食の旅に、ぜひ出かけてみてほしい。
丹後では老舗料理旅館の「茶六別館」にて京風会席を、宮津市無形文化財に指定されている「宮津おどり」と共に楽しめる。 食材の宝庫である富山を代表する食材「ホタルイカ」をはじめ、さまざまな富山の味覚を味わえる。 世界農業遺産に選ばれた石川の「加賀野菜」。里山里海の恵みが豊富な金沢の名産品だ。 日本海の幸が京に旬の味を運んでくる。
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