- 渋谷エクセルホテル東急に二つの東急電鉄コンセプトルームができました。
「トレインシミュレータールーム」と「昔懐かしの東急電鉄コンセプトルーム」です。
ホテルと東急電鉄とのコラボは初とのこと。
私は鉄道が大好きなので聞いただけでワクワクします。
今回は「トレインシミュレータールーム」に宿泊します。
心躍りながらホテルへ。渋谷駅直結になりますので、屋内でつながっているのも特徴です。
チェックインをします。シャキッとしたフロントの方、私も背筋がのびました。
いよいよ客室へ
- カードキーで部屋に入ると、目が星になりました。
「これはすごいぞ」
部屋の雰囲気はWebで見ていたものの、実際にその空間に立つと数倍すごさをかんじますね。
上品な調度品の中にドーンとシミュレーターが鎮座しており、壁には東急の電車たちの写真が飾られています。
路線図やホーム案内板、電車の銘板なども壁に展示されています。
いずれも実際につかわれていた「本物」。「南町田」は駅名が「南町田グランベリーパーク」に変わる前のもの。駅のホーム表示版は「新丸子」「多摩川」「田園調布」どの駅で使用されていたものだろうか。
窓側のソファでは東急線キャラクターの「のるるん」がお出迎えしてくれています。 -
すごいと思ったのは、鉄道のアレンジをしても上品さをしっかりと保っているところ。
どちらかというとシミュレーターは、客室にはふさわしくない大きな機械なのですが、研ぎ澄まされた客室の明るい雰囲気はまったく損なわれておらず、ものすごく感動しました。
窓の外は大都会の夜景。変わりつつある渋谷の街の明かりが広がります。
さっそく乗務
- 早速、シミュレーターをプレイしてみましょう。(以下、乗務という)ミュージシャン向谷実氏が手掛けられたこのシミュレーター。
実際に走っていた8090系電車の運転席を使っています。マスコンハンドルももちろん本物。
このシミュレーターでは東急の「東横線」「田園都市線」「大井町線」の三路線の運転が体験できます。 - 運転席からの映像はCGではなく実写映像。大きなモニターで表示されるので臨場感がすごくあります。安心なのは起動方法はとても簡単、スイッチボタンをおすだけ。また場面セレクトもボタンで簡単にできるのはとっても安心です。
- 先ほど渋谷駅で聞いてきた発車メロディ(向谷実氏作曲)が奏でられ、マスコンハンドルを力行に入れると列車は動き出しました。
地下区間を抜けると代官山駅、かなり手前で停車してしまいました。そして中目黒駅をでると今はもう走っていない東京メトロ03系とすれ違ったり、工事中の祐天寺駅の姿が見えたり鉄道ファンにはたまらない場面が織り込まれています。 - 祐天寺駅に着くと評価が表示されます「70点」。なかなか難しいなあとおもっていると画面には「次の人に代わって下さい」とのメッセージ。
いや、今日は代わらなくてもいいのです。なんという贅沢。 -
次の乗務は田園都市線です。
乗る機会の少ない区間はやっぱし難しいですね。
と、言い訳しつつ。
次は大井町線に乗務。
大井町線は5両なので、他の路線と同じ感覚でハンドル操作しているとオーバーランしてしまうので難しいです。難易度が表示されているので一番難易度の低い区間を選択して乗務。だんだんコツがつかめてきたぞ。
お弁当を超越したお弁当「しぶべん」
- 19時30分になり予約をしていた食事が部屋に届きました。
予想とちがうぞ?
- ワゴンに乗せられてお重と、保温ポットと、デザート、上品なグラスにつがれたウォーター。ホテル使用のスプーン。
てっきり袋に入った弁当箱を渡されるだけかと思ってましたが、こんなに丁寧なものだったとは!
- それだけではありません、お弁当の中身のお料理もすごい。
これぞホテルの食事。お料理の種類や盛り付け、食材へのこだわりなど、まるでコース料理のようで、そこにかわいく「のるるん」のかまぼこがちょこんといるのが鉄道好き向けにアレンジされていてうれしいです。
メニューのご紹介を。
•東京ビーフハンバーグ/ポテトフライ/温野菜/渋谷のはちみつソース
•和風サーモングリル 東京野菜のピクルス添え
•マカロニとシーフードのサバイヨングラタン
•5種のオードブルとサラダバリエーション 東急線キャラクター「のるるん」カマボコ添え •ごはん/漬物/お味噌汁
•渋谷エクセルホテル東急特製プリン - お味噌汁は保温ポットに入っており温かいのがうれしい。
オードブルの生ハムは特に絶品です、ハンバーグもしっかりして歯ごたえありジューシーでおいしいし、最高です。
お米は宮城県の「だて正夢」を使っているとのこと。
おいしいです。
デザートも上品で華やか。甘党の私は、ぺろりといただきました。
実は
「のるるんかまぼこ」以外にもう一つ東急にまつわる素材使われています。
何かおわかりでしょうか?
それはハンバーグのソースに用いられている「渋谷のはちみつ」です。
なんと東急百貨店本店の屋上にある養蜂箱で採取されたはちみつ「渋谷のはちみつ」。
東急と渋谷とのかかわりのある素材が使われている料理を渋谷の景色をみながらいただくのは、幸福を感じました。
ごちそうさまでした。
乗務に熱中させる3つの立役者
- 食事後もみっちり乗務。
すべての路線、すべての区間を乗務し気づけば60分経過。
時のたつのを忘れるほど集中して乗務できたのには3つのこだわりがあったからだと感じました。
まずはスピーカー。実際のモーター音や発車メロディ、車内放送などリアルに聴かせてくれます。使われているのは1973年創業の音響専門会社「フォステクス」社製のもの。鉄道、鉄道ファンにとって音も重要なエッセンス。モーターの音の具合でスピードを感じるなどシミュレーター乗務にも大きく影響してきますので、よりリアルな乗務を体験できます。
- 次に椅子。ゲーミングチェアで有名な「GTRACING」社製のもの。長く座っていても身体に負担のかからない設計になっています。ずーっと乗務することを見越してのセレクト。 実際に座りごこちもよく乗務に集中できました。
- 最後に手袋。現在はコロナ対策という意義もあり、白手袋がセットされています。実際の運転士さんは手袋は必携品で、乗務中は手袋をはめて運転されるので、ハンドルを手袋ごしに にぎるとき本物の運転士さんになった気持ちになり、気合が入ります。この手袋、鉄道会社によって手袋の素材が異なるのですが、東急電鉄で使われいる素材に近い手袋が用意されているので、本物感がより一層増します。
- こだわりがすごいですね。
シミュレーター乗務は23時~翌朝6時までは休止するのが定められており、 休憩いれつつ時間ギリギリまで乗務しました。
23時になり電源をOff。そして自分のPCでメールチェックを少々。 wifi完備なので、ストレスなくチェックできました。
気づけば隣の東急プラザビルのオフィスフロアも消灯されつつあります。 明日の乗務に備え日付が変わるごろ寝ます。おやすみなさい。
早朝乗務
- 5時50分起床。
おはようございます。
カーテンを開けるとまだ真っ暗でしたが、白湯を飲んで身体を起こしておると東の空がビル越しに明るんできて美しい朝焼けがとても美しく、窓からの眺めが絵画のようです。
- さっそく早朝乗務です。
東横線の「祐天寺―自由が丘」に集中して、高得点を狙うことにします。
不思議と眠気もどこかへ去っていきました。
少し昨晩よりも列車の速度を落とさずに駅に進入することにしました。
そうすると、なんということでしょう!停止目標位置0cmを記録。ぴったり列車を止められました。
つぎはもう少し緩めにブレーキをかけようと心掛けるも、なかなか0センチとはいきません。
もう一度乗務します、今度は少しブレーキを強めにかけてみましたが、全然手前で止まっちゃいますね。なかなか難しい。
と何度か乗務トライしてると、ぴったり0センチというわけにはいかなかったですが、やったぞ!総合得点87点が出ました!
- よし、なんとか90点台を目指すぞと乗務も続けているとあっという間に午前8時30分。
すっかり夜も明け部屋から見えるJRの線路も、よりたくさん通勤電車が走るようになりました。この春で姿を消す、185系電車のおはようライナー新宿もやってきました。
そろそろブレックファーストの時間。
電車を見ながら朝食を食べる至福
- 朝食は5階にありますラウンジ「エスタシオン カフェ」でいただきます。
ゆったりできるソファー席もありましたが、あえて電車の見えるカウンター席をセレクト。飲み物と、卵料理の注文をします。
さすがホテルの朝食ですね。サラダのドレッシングが、3種類手作りで用意され目の前でかけてくださいます。フレンチドレッシングをセレクトしました。卵料理はオムレツをチョイス。トーストはカイザーメゾンの食パン。ちょうどいい具合に焼いたものに、バターとアプリコットジャムをつけていただきます。ソーセージやベーコンもとってもジューシーで香り高いです。窓から差し込む朝日にお料理とシルバーが映えます。 ごちそうさまでした。
さまざまな特典
- そしてもう一つの特典をご紹介しましょう。宿泊のお客さんには、鉄道中古部品を購入できる特典が付いてます。
私は、改札挟を購入。2000円ととてもリーズナブル。実際に使われていたもので、とてもアツいものです。早速、記念の硬券にハサミを入れてみました。切れ味抜群。これまで何枚も切符を切ってきたんでしょう。しっかりと今後は私が切符を切っていきたいと思います。
チェックアウト
- さて部屋に戻りシャワーを浴びて、出勤前に最後の乗務。
祐天寺ー自由が丘で、高得点を狙いますが、なかなか87点は超えないです。電車を正確に止めるってやっぱし難しいのですね。 - 普段当たり前に時間通りに電車が来るそこには運転士さんの技術が必要不可欠だと言うこと。
そして私が眠った24時以降も電車は走り、私の起きた5時50分にはすでに始発列車動き始めていました。
私たちの暮らしている生活に、もはやなくてはならない鉄道。それを動かしている鉄道員の皆さんの偉大さを改めて感じ、壁面の展示を思い出に焼き付けつつ、最後はのるるんに見送ってもらいながら、シミュレータールームを後にしました。今日もいちにち、仕事がんばりましょう。
南田 裕介
- 1974年奈良県生まれ。国立静岡大学卒業後、1998年株式会社ホリプロに入社。現在、ホリプロのスポーツ文化部でアナウンス室を担当。鉄道が好きすぎて、会社員でありながらテレビ朝日「タモリ倶楽部」、日本テレビ「笑神様は突然に...鉄道BIG4」、CS日テレプラス「鉄道発見伝」など、テレビ番組やラジオや鉄道関連のイベントに数多く出演。2020年9月にの書籍『南田裕介の鉄道ミステリー』(天夢人)をリリース。絶賛発売中。