人が集い、街の力が湧き起こるシンボルに
- 私が仕事に取り組む時に最初にやることは、なぜこうなっているのか、こう変えられるのではないかと、まず既成概念を疑ってみること。例えば店舗なら、そもそも物を売る場所なのかという根本的な部分から疑ってみます。そんな疑問を積み上げて当たり前を疑うからこそ、新しい発想が生まれると考えています。
- 仕事で海外に行くことも多く、現地ではもちろん勉強のために建築も見ますが、それ以上に好きなのが人の営みや日常の風景を見ることです。昨年行ったポルトガル・リスボンでは民泊をしたんですが、家を一歩出ると普通の街角で、狭い路地にみんな椅子を出してご飯を食べていたりする。街があってそんな日常風景があって、そこで人がどうやって過ごしているのか、そういうことが仕事のヒントになるんです。
- このタワーも、ひとつの街のようなもの。この場所でこんなふうに人が過ごし、こんな出来事が起こる、そうやっていろいろと考えながら進めてきましたが、本当に面白いプロジェクトに携われて光栄でした。
- 実はこのタワーのデザインを考え始める時、「グランドホテル」というキーワードをいただいたんです。グランドホテルとは、ただ泊まるだけではなくパーティや特別な日の食事など、ハレの場所としてみんなが行く所。まさにこのタワーも、ふたつの異なるホテルに劇場、映画館、ライブハウスと、特定の層だけでなく、国籍問わず老若男女が集う場所だということが、すごくいいなと感じたんです。周りも活気溢れる街ですし、この施設と街が連動すれば、パワフルな発信ができるのではないでしょうか。
- 人が集い、ここに来れば何か出会いがあり、いろいろなムーブメントが生まれる。「東急歌舞伎町タワー」という場所が、そんな力が湧き上がるひとつのシンボルになってほしいと思っています。
Yuko Nagayama
- 1975年東京都生まれ。昭和女子大学生活環境学科卒業後、’98年~2002年青木淳建築計画事務所勤務。ʼ02年に永山祐子建築設計を設立。主な仕事に豊島横尾館、ドバイ国際博覧会 日本館、ルイ・ヴィトン京都大丸店、JINS PARK前橋など。東京駅前に進行中のTorch Tower(低層部)も手掛けている。JIA新人賞、WAF Highly Commended賞、JCD DesignAward銀賞、東京建築賞優秀賞、照明デザイン賞最優秀賞など受賞多数。