人がきっかけで旅に出かける
- 19歳でドラマデビューするや否や、182㎝の長身とワイルドなルックスで、若手イケメン俳優として人気が高まり、以来、話題作に次々と出演。今年も、大人気映画シリーズの最新作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』の公開を5月23日に控え、2026年放送のNHK大河ドラマ出演が決定するなど、多忙な大東駿介さんだが、オフがあればすぐにでも出かけるほどの旅好きを自認している。
「アプリで自分が旅した場所をマークしているんですが、けっこうあちこち行っていますね。去年だけでも、北海道、青森、京都、福井……、富士山周辺にもよく出かけました。とくに多かったのは、高知県。2年前に『らんまん』(高知県出身の植物学者・牧野富太郎氏の生涯を描いたNHK連続テレビ小説)に出演させていただいたんですが、そのご縁で、牧野植物園のスタッフさんとラジオで対談させていただき、『今度おじゃまします』となって。行ってみたら、ホンマに最高の場所でした。今すぐにでも行きたいくらい(笑)」
大東さんの旅先選びは、こんな風に“人”がきっかけになることが多い。ロケで滞在した北海道で知り合った飲食店経営者のもとを、家族で訪れたこともあるという。
「スナックのママさんなんですけど、スタッフさんと撮影終わりによくおじゃまして、ものすごく美味しい“ちゃんちゃん焼き”を食べさせてもらっていたんですよ。そこが閉店するというので、家族で訪ねたんですが、子供たちがママにすっかりなついちゃって。結局、彼らは、ママの家に泊まらせていただきました。ホテルを予約していたんですけどね(笑)。お店のお手伝いもさせていただいたりして、子供たちにとって、いい社会勉強になったと思います。そんな風に、最近は、人とつながるための旅が多いですね」 服クレジット:コート¥55,000、共地のパンツ¥29,700(ともにニードルズ/ネペンテス TEL03-3400-7227) シャツ¥31,900、ネクタイ¥14,300(ともにエンジニアド ガーメンツ/エンジニアド ガーメンツ TEL03-6419-1798) ベルト¥27,500(ウォーボーン ウォーク/ネペンテス TEL03-3400-7227) シューズ¥86,900(ネペンテス/ネペンテス TEL03-3400-7227)
旅はいつもと違うエネルギーが出る
- 「あの人に会いに行く」のを目的にすることもあれば、場所ありきで訪れ、そこで知り合った人と“新たにつながる”旅もある。いわゆる観光もするものの、それよりも、街をぶらぶらと歩いたり、現地で知り合った人に薦められた店や場所を訪ねたりするほうが、大東さんは好きだという。
「飲み屋で知り合ったおっちゃんが、『この食堂の、この丼が美味しいんだよ』と教えてくれたものは、単なる丼じゃなくて、“あのおっちゃんが好きな丼”になる。『おっちゃんは、仕事が終わったあとに、この丼を食べてひと息ついているんだ』なんて、おっちゃんの物語をいただくような感じというか。もしそれが自分の口には合わなかったとしても、自分の中で楽しみとして成立するから、OKなんです」
そう言ったあと、「旅をしすぎていて、もう単なる観光だと物足りなくなっているのかも」と、笑う大東さん。
「旅に出ると、普段とは違うエネルギーが出ませんか? 僕、去年、『岸部露伴は動かない 懺悔室』の撮影でイタリアに1ヵ月滞在したんですが、電車で2時間かけて、ボローニャまで出かけました。目的は、本場ボロネーズパスタ(※フランス語読み)を食べるため。それって、すごく贅沢な時間ですよね。『オレ、これを食べるためだけに電車を乗り継いで、ここに来たんだ』って。旅って、いつもとは違うことをしたくなるし、してしまうエネルギーがある。だから、楽しいんでしょうね。
旅先の宿で寝つけない時は、がんばって眠ろうとせず、街を歩き回ります。街を歩いていると、(普段暮らしている場所とは)違う所にいるんだなと、実感できてワクワクします。それと同時に、思うんですよ、『明日も朝早いのに、寝られへんからって、夜更かしして街を歩き回るって、オレ、なんて渋いことしているんだろう!』と(笑)。(自宅のある)東京にいたら、そんなことしないのに」
境界線を越えることを恐れない。旅はそのきっかけになる
- もうひとつ、1ヵ月間に及ぶイタリア滞在で、大東さんが改めて感じたことがある。それは、旅は、“自分を縛っているものから解放されるきっかけになる”ということ。
「日本人なんだから日本で暮らすのが当たり前だと思ってきたけれど、こんな風に、外国で暮らすこともアリなんですよね。“国境を越えてはいけない”理由なんてなくて、ただ、自分がそう思い込んでいるだけというか。
人とのつながり方にしてもそう。このご時世、『知らない人に、むやみに話しかけてはいけない』のが暗黙のルールとされている気がしますが、旅先では、僕は、出会った人に積極的に話しかけてしまうし、相手も好意的に応じてくれることがほとんど。話しかけちゃいけないというのは、自分が勝手に引いていた境界線なんですよね。旅は、その境界線を軽々と越えさせてくれる気がします。というか、僕は、境界線を越えることを恐れない自分でいるために、旅に出ているのかもしれません」
そう言ったあと、「もっとも最近は、仕事以外でのひとり旅は、ほとんど行っていませんけど」と、大東さん。プライベートでは、家族みんなで自前のキャンピングカーに乗り込み、自然を巡る旅が多いという。
「宮古島みたいな自然に囲まれた離島のリゾートホテルでのんびりするのにも憧れるし、温泉旅館で妻とふたりで浴衣を着てお酒を飲むのもいいなと思いますけど、まだ子供たちが小さいですからね。そういう旅は、当分先かな(笑)」
大東駿介(だいとう しゅんすけ)
- 1986年大阪府生まれ。2005年デビュー。近年は連続テレビ小説「らんまん」、「アナウンサーたちの戦争」(2023)や「あのクズを殴ってやりたいんだ」(2024)などに出演。待機作に映画「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(5月23日公開予定)、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」(2026)がある。
- Styling=服部昌孝 Hair&Make-up=佐藤友勝