INTERVIEW

2025.01.31
INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW  CRYSTAL NODA
野田クリスタル「風情ある宿を拠点にした“孤独のトラベル”が好み」

M-1とR-1の二冠達成を成し遂げ、お笑い界で唯一無二の存在感を放つマヂカルラブリーの野田クリスタルさん。パーソナルトレーナーやゲームクリエイターとしても精力的に活動する、その活力源のひとつが旅なのだとか。持ち前の感性から生まれた独創的な旅のモットーや、今なお記憶に残っている思い出など、旅にまつわるお話をうかがいました。
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  • Sanae Murakami
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  • Ryo Toyoda
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待ち望んだオフには東京を離れて各地の温泉へ


  • テレビやラジオ、舞台、自身の名を冠した「クリスタルジム」など、幅広い場で活躍する芸人、野田クリスタルさん。日々多忙であることは想像にかたくないが、旅行に出かける時間などあるのだろうか。

    「なるべくその時間を作りたいなと思っているんです。『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0(ZERO)』では“働き方改革SP”と称して、積極的に休みを取ろうという企画を定期的にやっていて。あとはたまに何日間か休暇を取れたら、たいてい東京を離れてどこかに旅行しています」

    そんな野田さんの旅に欠かせないコンテンツはずばり温泉。トレーナー業で常に筋肉をフル稼働させ、またお笑い業で脳もフル回転となれば、温泉はご褒美に違いない。

    「周りの芸人は、基本ギャンブルやお酒を目的に海外に行く人がほとんどですけどね。みんなに“ここの温泉良かったよ”と言っても、ま〜反応が悪い……。でも僕はギャンブルをやらないのでもっぱら風呂です。無臭無色の泉質だと“温泉に入ってる”ような感覚がどうしても薄いので、砂利まみれでもいいから湯が濁っていて、入った瞬間に身体がしびれるような強烈な泉質の温泉がある所をよく選びます」

    時間の許す限り、日本各地の温泉地に繰り出す野田さん。温泉とひと口にいっても千差万別だが、これまで数多く訪れたなかでお気に入りの温泉は?

    「伊豆諸島に属する式根島(新島村)にある足付温泉はヤバかった! 海沿いに自噴する、海水と源泉が混ざり合う野湯です。源泉はめちゃくちゃ熱いんですけど、それが海水と混ざることでほどよい湯温になる。僕が訪れた時は海水多めだったのか、冷たすぎて到底入れなかったんですけど、これこそ温泉の究極形だよなと。温泉好きじゃなかったら引いちゃうレベルかもしれません。あとは、岐阜の奥飛騨温泉郷にある新穂高温泉も良かったです。源泉掛け流しの露天風呂もあって、秋に行くと紅葉と初雪を被った北アルプスを眺めながら温泉に浸かれる。風情があって気持ち良かったです」


旅先では筋トレよりも街歩きをするに尽きる!


  • トレーニングを日課とし、温泉を愛する、健康エリートな野田さん。旅行中でもルーティンが崩れないよう、トレーニングジムが併設されているホテルを選ぶのだろうか。

    「ジムは特に必要ない。運動という点でいえば、旅先では筋トレするよりも街を歩きたい。その地に根づいた商店街を散歩して、美味しそうなものがあれば買って食べる。温泉が好きになってから、そんな旅の楽しみ方にも気づけました」

    仕事やトレーニングのことは完全に脇に置き、旅の一瞬一瞬を味わい尽くすことが野田さんの旅の流儀。

    「かつて文豪が執筆のために滞在したといわれる旅館とか、野武士が立ち寄ったとされる温泉宿とかに惹かれるんですよ。僕は旅に出る時、自分自身を侍だと思っていまして(笑)。僕はドラマ『孤独のグルメ』が好きなんですが、旅行中は脳内で“孤独のトラベル”をやってるんです。例えば街外れの温泉を訪ねたら『ほう。こんなところに温泉が……』『ここの湯、濁りが濃い』『硫黄泉か、……これはいい』というふうに、頭の中でぶつぶつと(笑)」

    ロマンに溢れた野田さんの旅。初めて自ら旅程を立てて出かけた先は「静岡県の下田界隈」だそう。

    「下田を旅行した時は、新宿駅から伊豆急下田駅まで走る観光列車『ザ・ロイヤルエクスプレス』に乗りました。車窓から景色を見ながら駅弁を食べて“これが人生か……”と。下田のひと駅手前の蓮台寺にある素泊まり4000円の宿に泊まりましたが、その日は運悪く台風が直撃していて。夕食時に大雨に打たれながら街を彷徨い、やっと見つけた個人経営の飲食店で鴨肉のパスタを頼んだらすごく美味しくて。食べ終わって雨の中帰ろうとしたら、お店の方がわざわざ車で宿まで送ってくれました。これが人の優しさか、と。どんなきれいな景色よりも記憶に残っています」


地元の食を味わえる朝食やプールがあるホテルは癒やし


  • 滞在するホテルにおいては、設備の充実度以上に、その空間に漂う趣を重視しているという野田さん。ただし、朝食付きやプール付きのホテルは、やはり気分が高揚するそうだ。

    「朝食の内容も、味噌汁や焼き魚みたいな定番メニューがあると嬉しいですし、その土地のものを食べられるといっそう楽しい。仕事で滞在するホテルでも、時間に余裕さえあれば進んで朝食を食べに行きます。あとは昨年、お笑いコンビの囲碁将棋やダイヤモンドと全国ツアーで宮古島を訪ねた時に滞在したホテルにはプールがあり、テンションが上がりました。朝一番からプールで泳いで気持ちよかったです」

    ちなみに、相方の村上さんと二人旅をしたことは?

    「村上と? 一回もないです。別に仲が悪いわけではないんですけど、仕事終わりに飲みに行く人間(村上)と、仕事後は自分の時間が欲しい人間(僕)、趣味も生活スタイルもまったく違う。ただ、ふたり旅も確かに面白いかもしれませんね。温泉は村上があんまりだろうから、地酒を飲みに行く旅行とかアリかもしれない。近場だと新潟とか楽しそうだな」

    非日常へと誘われる旅の時間は、これからも野田さんの心の肥やしであり続けるだろう。最後に、今後旅してみたい場所についてもたずねてみた。

    「めちゃくちゃあります。47都道府県の半分も行けてませんから。九州や四国ももっと行ってみたいし、沖縄の離島といえば宮古島までしか行けていない。最近気になっているのは、日本最南端の有人島である波照間島です。僕は船酔いしやすいんですけど、波照間空港まで石垣島発の定期航空便が出ているのでぜひ行ってみたい。あとはジブリ作品の“聖地巡礼”も最高でしょうね! 『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルとの説もある台湾・九份(きゅうふん)とか、『魔女の宅急便』のモデルのひとつと噂されるクロアチア・ドブロブニクとかにもいつか行ってみたいです」


野田クリスタル


  • 1986年神奈川県生まれ。2007年結成のマヂカルラブリーのボケ担当、ネタ作りも担う。コンビで「M-1グランプリ2020」王者に輝き、ピンでも「R-1ぐらんぷり2020」で優勝。近年は自身がジム長を務める「クリスタルジム」でトレーナーとして活動したり、『スーパー野田ゲーMAKER』をはじめとするゲーム制作を多数手がけるなど、マルチに活躍。

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