INTERVIEW

2024.12.20
INTERVIEW

SPECIAL INTERVIEW
KOU MAEHARA
前原滉
「人生の転機になったのは、ヒッチハイクでの旅でした」

竹野内豊さんの部下役を演じているタクシーアプリ「GO」のCMで知名度が急上昇し、映画にドラマにと出演作が引きも切らない、今最も注目される俳優のひとり、前原滉さん。人生の転機になったという旅、そして前原流トラベル・スタイルについてお話をうかがいました。
  • TEXT
  • Sanae Murakami
  •  
  • PHOTO
  • Hiroki Wada
Share

自分を見つめ直すためにひとり旅を決行

  • 「いるいる、こういう人!」と、どんなキャラクターも“はまり役”にしてしまう演技力と存在感が評価されている俳優、前原滉さん。12月20日公開の主演映画『ありきたりな言葉じゃなくて』では、未熟で独りよがりなゆえに、幸福の絶頂から奈落の底へと突き落とされる新人脚本家・藤田拓也を演じている。

    「拓也は周りが見えていなくて、自己中心的で浅はかな人間。でも、少し共感できるんですよね。自分が平凡な人間だとわかっていても、特別になりたいという気持ちがあって、だからこそ、もがいていて。デビュー前、俳優養成所に所属していた時の自分がそうでしたから」

    高校卒業と同時に俳優を目指して、現在所属する事務所の養成所に入所した前原さんだが、初めは本人いわく、「完全な窓際族」。レッスンに通っては来るけれど、言われたことだけをやって何のインパクトも残そうとしない。そのうち辞めてしまうだろう。周囲からそう見られていて、自分自身も養成所を辞めようと思ったことがあったとか。

    そんな自分を見つめ直すべく決行したのが、ヒッチハイクでのひとり旅。車を乗り継いで鹿児島へと向かいながら、車内で聞いたドライバーさんたちの悩み話に感銘を受けたと語る。

    「これまで僕が耳にしたことがないような、けっこう重い話が多かったですね。それを聞いているうちに、自分の悩みがしょうもないものに思えてきました。人に笑われたくない、失敗したくないと思って、無難なことに逃げていたけれど、どうせなら振り切ったことをして周りに笑ってもらい、楽しんでもらった方がいい。そう考えるようになり、レッスンでの行動を変えました。そのことがデビューのキッカケになったと思います。なので、旅が人生の転機になったようなものですね」

事前にスケジュールを決めず、“余白”を楽しむ旅が好き

  • デビュー後も3ヵ月に1度くらいのペースで、仲のいい先輩や友達と旅に出かけるという前原さん。目的地をあらかじめ定めるのではなく、当日の気分次第で「とりあえず北に」「南に」と方角だけ決め、車を走らせるスタイルだ。

    「(旅の行程が)事前にすべて決まっているというのはちょっとしんどいというか、どこか余白が欲しいんですよね。地図アプリを開いて、『この近くに有名な温泉があるんだ。行ってみようか』とか。泊まる所もその場で決めることが多いんです。

    旅行のスケジュールが綿密に決まっているというのに憧れる気持ちもあるんですが、僕にはそれだけの段取りをして実行する能力がないから、別の方法で旅を楽しもうとしているのかもしれません。もっとも僕は運転できないので、先輩や友人の車に乗っているだけなんですけどね(笑)」
  • ジャケット¥106,700(税込)、ポロシャツ¥55,000(税込)、パンツ¥85,800(税込)(すべてエンポリオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン TEL03-6274-7070)

ホテルに望むのは、半身浴ができるバスルーム

  • その時の気分に合わせ、自由な旅をする前原さんにとって、旅先の宿=眠るための場所。食事は付近の飲食店で地の美味を堪能し、界隈に良さそうなサウナがあれば立ち寄るなど、宿を拠点に“その土地ならでは”を楽しんでいるという。

    「東急ホテルズさんの取材なのに、僕、泊る所に無頓着過ぎますよね。こんな話で大丈夫ですか?」と申し訳なさそうな表情を浮かべた後、「あ、でも最近ホテルでこだわっていることがあるんです!」と言葉をつないだ前原さん。それは、「客室のバスタブが広くて、快適なこと」。

    「最近、プライベートで旅行する機会が減った分、舞台の仕事などで地方に行くことが増えました。大浴場があるホテルに泊まらせていただくこともありますが、僕は客室のお風呂に入るようにしています。大浴場で仕事の関係者と一緒になっても、眼鏡がないと見えなくて誰だかわからなくて挨拶すらできない可能性が高いから。その点、客室のお風呂ならそんな心配はいりません。周りを気にせず、ひとりでのんびりと半身浴するのって、気持ちがいいしすごくリラックスできます。だからこだわりがあるとしたら、半身浴ができるくらいの広さがあって、快適なバスルームのホテルだと嬉しいですね」

    最後に、今後旅してみたい場所を聞いてみた。

    「国内なら北海道、海外ならイタリアですね。実は僕、海外旅行をしたことがないんですよ。(イタリア・ミラノに本拠地を置くサッカーチーム)インテルの大ファンなので、一度はホームで試合を観戦したいと思っているんですが、……うーん、実現できるかな。あらかじめ計画するのが苦手だから、当分行けない気がします(笑)」

前原滉(まえはら こう)

  • 1992年宮城県生まれ。高校卒業後、現在所属する「トライストーン・エンタテイメント」の俳優養成所に入所し、2015年にデビュー。映画『あゝ、荒野』、『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』『彼女来来』、や、ドラマ『あなたの番です』『らんまん』など話題作に多数出演。2025年1月スタートのドラマ『119エマージェンシーコール』にも出演。

映画『ありきたりな言葉じゃなくて』

  • ワイドショーの構成作家として奔走する32歳の藤田拓也。鬱々とした日々のなか、先輩脚本家の推薦で念願の脚本家デビューが決まり、有頂天になった拓也の前にひとりの女性が現れて……。偶然の出会いによってもたらされた“予期せぬ人生のつまずき”、アラサーという青春から微妙な距離にいるからこその男女の葛藤とあがきを描いたヒューマンドラマ

    脚本・監督:渡邉崇
    原案・脚本:栗田智也
    出演:前原滉、小西桜子、内田慈、奥野瑛太、那須佐代子、小川菜摘、山下容莉枝、酒向芳ほか
    2024年12月20日(金)より全国にて公開

    arikitarinakotobajyanakute.com/

  • Styling=臼井 崇(THYMON Inc.)
    Hair & Make-up=ゆきや(SUN VALLEY)

関連記事