- 世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点として再開発が進められている、川崎市のキングスカイフロント。このエリアでは健康や医療などの分野でグローバルビジネスを生み出し、日本の成長戦略を牽引することが期待されています。
このエリアの交流拠点といえる存在が「川崎キングスカイフロント東急REIホテル」。ホテルが必要とする消費エネルギーのうち約30%を水素発電でまかなうなど、地球に負荷をかけない取り組みを精力的に行っています。川崎市・福田紀彦市長と東急ホテルズ・村井淳社長が、キングスカイフロントの役割と未来について、想いを語り合いました。
福田 キングスカイフロントには、現在70以上の研究施設等があります。かつてシンガポールの研究施設が集まるエリアを視察したことがありますが、そのときに新産業を創出する場所には ハブが必要だと感じました。研究者同士や外部から訪れた人が宿泊や食事をしたり、お茶やお酒を飲んだりしながら意見を交換する。人と人、研究と研究の交流がイノベーションを生み出すきっかけになるんです。そうしたハブが欲しいなと思っていたところに、東急ホテルズがこんな素敵なホテルをつくってくれた。しかも川崎市が2015年に策定した「水素社会の実現に向けた川崎水素戦略」に共感し、カーボンニュートラルの実現に力を注いでくれている。ありがたいことです。 川崎市長 福田紀彦
川崎市に生まれ、市内の小・中学校へ通う。父親の転勤により、高校からアメリカで生活。2013年より3期にわ たり川崎市長を務める。- 村井ホテルでは2018年の開業時より環境省の実証事業に参画し、「世界初の水素ホテル」としてCO2の削減に取り組んできました。エリアの企業様とも連携して、まちづくりや、まちで生まれる事業に関わることができて、感謝しています。
株式会社東急ホテルズ 代表取締役社長 村井 淳 - 福田水素は目に見えず、人々の暮らしにどういう風に役立っているのかと聞かれても、説明がしにくい面があります。ですから、このホテルのようなショーケースがあると、とても力強いんです。「水素のエネルギーで発電した電力を使ってリーフレタスをつくり、ホテル内のレストランで食べることができる」。そう伝えると納得してもらえます。講演などで川崎水素戦略について説明する際にも、ホテルの取り組みを具体例として出させてもらっているんです。
次の世代を育てるため環境学習にも力を入れていく
- 村井ホテルでの水素発電の実証事業は2022年3月でいったん終了となりましたが、2023年以降も新たな仕組みで継続していくことを決断しました。これからの時代は、「地球にやさしい、まちにやさしい、人にやさしい」を意識した、エシカルなこだわりのある消費を通じて選ばれることが、ますます重要になってきます。その実現のためにも、水素発電の継続は欠かせないと考えました。さらに、多くの川崎市民
が水素に高い関心を持っていることも継続理由のひとつです。また、次代を担う子供たちにも、水素の役割をもっと知ってほしいと思っています。
福田それは重要なことですね。川崎市では環境学習に力を入れています。ただ、どんなことをすれば子供たちが興味を持ってくれるのかが大きな課題でした。そんなときに「東急バスが運行する水素バスや、水素ホテルを見学するという授業はどうか」という提案をいただいた。「ぜひ一緒にやらせてください」と、こちらからお願いしたんですよね。
村井日本はもちろん、世界中の子供たちにも水素の可能性を感じてほしいですね。2022年3月12日に、羽田空港とキングスカイフロントをダイレクトにつなぐ橋「多摩川スカイブリッジ」が開通しました。海外からのアクセスが向上し、キングスカイフロントの注目度がさらに高まっていくと期待しています。今後も環境への新たな取り組みにチャレンジし、国内外へ発信を続けていきたいですね。
福田多摩川スカイブリッジの開通によって、川崎市と東京都の距離がぐっと縮まりました。私は東京と川崎の関係を、マンハッタンとブルックリンのようだと感じています。東京には都会性が、川崎には昔から根付いている人情味や、キングスカイフロントのような新事業を展開できるスペースがある。東京と川崎とでお互いがそれぞれの特徴を生かし、同じ目標に取り組んでいくことができれば、世界へもっと大きなアピールができると期待しているんです。
村井SDGsの時代は、つながりや調和が重要。川崎キングスカイフロント東急REIホテルも、周囲の環境や自然と調和を図りながら、エシカル・スローライフを提唱し続けたいと思っています。
福田私はこのホテルを仕事だけではなく、プライベートでもたびたび利用しています。今後もキングスカイフロントの拠点として、素晴らしいホテルであり続けてください。