- 「猿払村のホタテを使ったことはありますか?」。「かけはし」とホタテ漁師、中山博一さんの取り引きがはじまったのは約10年前。中山さんが料理長の佐藤武士さんにかけた、このひと言がきっかけだった。佐藤さんは、お酒から野菜、肉まで、いい素材を生産者と直接取り引きしたいと考え、多くのつながりを持ってきた。店のHPでは「生産者のこころを伝えるかけはしとして此処に在りたい」と謳う。これを見た中山さんが地元のホタテを知ってもらいたい、と同店を訪れたのである。
- 猿払村はホタテ養殖が盛んなもののほとんどが加工されて香港や台湾に輸出されており、当時は札幌圏での流通はほぼなし。後日送られてきたホタテを試食した佐藤さんは、そのしっかりとした歯応えに驚いたそう。以来付き合いが続き、このホタテをほかの飲食店に譲ることもあるという。
- 北海道のホタテの養殖方法は2種類。稚貝をカゴに入れたりロープにつるして1〜2年育てるものと稚貝を海底に撒いて2〜4年後に取るもの。猿払村のホタテの養殖方法は後者である。「元々天然のホタテもたくさんいたことから養殖をはじめた場所。潮の影響を受け動きながら育つので、ホタテは筋力が強く歯応えがあるのだと思います。近年は、山林との関係にも注目し、地域では植林活動もしています。山から流れてくるプランクトンを食べることで甘みのある貝に育っているのではないでしょうか」。中山さんは猿払のホタテの特徴をそう説明する。
- 漁は漁業協同組合の32隻で行い、漁獲後の貝はまとめてトラックで加工場に運ばれていく。それとは別に組合員ひとり当たり一定量を購入することができ、中山さんはそこから「かけはし」に送っているそう。船上でいけすに取り分け砂を吐かせ、港に着いたらすぐに発送することで、翌日には札幌で食べることができる。この新鮮さも歯応えのよさにつながっている。「かけはし」では、猿払村の漁期の3月〜11月中旬にホタテ料理を提供。お刺身はもちろん、フライや貝焼きにしても食べ応え十分で、旨味も濃い。地元の味を知ってほしいという生産者の熱意を引き寄せた「かけはし」ならではのメニューであろう。
漁協組合員が協力して行う
地撒き養殖の漁獲
漁は朝4時頃から漁協の組合員が船に分乗して行う。 海底を巨大な鉄製のスキのような道具で掻き、1日に1隻12トン以上漁獲。ホタテのグリコーゲンを調べ甘みもチェックしている。
「『かけはし』には大きな貝を選んで送っている」と中山さん。近年は漁師仲間や加工会社経由での流通も増えつつある。
生産者 中山漁業部 中山博一さん
- 祖父の代からホタテの漁師。
自身は35年ほどホタテ漁に従事する。ホタテで好きな食べ方はフライ。
生産者のエピソードが次々に
「味噌出汁バター焼」(¥935)。本枯節とアゴの出汁に味噌を加え貝焼きに。鮮度を生かし火が入りきる直前で提供。 アスパラの根元を与えた羊を「たたき」のような状態で仕上げた「アスパラひつじ モモ肉グリル」(¥3,179)。臭みがなく、羊肉の印象が変わるひと皿。 カウンター席、小上がりもある。 好きな野菜を選び自分で七輪で焼く「旬の野菜のあぶり」(時価)。17年前に開店した時からの人気メニュー。
和食 かけはし総本店
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住所:北海道札幌市中央区南4条西2丁目 第31桂和ビル4階
TEL:011-552-9984
営業時間:17:00~L.O.21:30(金・土曜は~L.O.22:30)※要予約
定休日:不定休
料金:HP要確認
kakehashi.in
佐藤武士さん
- オーナー兼料理長。道内ホテルなどキャリアを重ね同店へ。
いい物を子どもに食べてもらいたく食育に興味がある。