- 近年では多くのホテルに「ラウンジ」が備わり、それぞれに個性と上質感が増しています。宿泊者専用の「クラブラウンジ」とは異なり、訪れる人の誰もがそのホテルのもてなし最前線を体感できる、優雅で快適な空間として人気を博しています。ここでは、ホテルの表玄関でもあるラウンジについて、私の体験も踏まえ、魅力を紐解いてみましょう。
- ホテルラウンジの多くはカフェ機能を持ち、軽食やスイーツの提供、ときにはオールデイダイニングを兼ねた食事が可能なラウンジもあります。女性たちが通い詰めるアフタヌーンティーも、一般にはラウンジが舞台ですね。
- そんなラウンジの魅力のトップに挙げられるのは、やはりプロの礼儀正しいサービスが受けられることにあります。たとえコーヒー1杯の利用でも丁寧に席に案内される、優雅なときを演出してくれるさすがの嬉しい空間です。
- 私は、仕事の合間に小腹が空いたときなどにホテルラウンジへ駆け込むことがあります。お目当てはアフタヌーンティーでもスイーツやサンドイッチでもなく、そのラウンジだけの特別メニュー。例えば、「ザ・キャピトルホテル 東急」のラウンジ「ORIGAMI」での絶品「ナシゴレン」とか。また、「渋谷エクセルホテル東急」のラウンジ「エスタシオン カフェ」には珍しい「ヴィーガンメニュー」(ヴィーガン=完全菜食主義者)があると知り、次回はこれに決まりです! ホテルラウンジでのこうしたバリエーションをご存知でしたか?
- 開放感もあり、“気”の流れの良さを感じるラウンジは、日本に限ったことではありません。忘れがたいラウンジの光景が私の脳裏に焼き付いています。それはパリの老舗ホテル「プラザ アテネ」のロビーラウンジを舞台に、毎朝、同時刻に犬を連れてやってくる「ご近所マダムの物語」。RESERVEの席に座ると、物言わずともクロワッサンとカフェオレが運ばれます。交わされる言葉は、ホテリエの「ボナペティ、マダム!」と、マダムの「メルシ!」のみ。滞在者の私には、まるで仏映画のワンシーンのように見えた朝のルーティーンでした。日本でもきっと、どこかのホテルのラウンジで何かしらの素敵な物語が綴られているにちがいありません。
KYOKO SEKINE(ホテルジャーナリスト)
- スイス山岳地での観光局勤務、その後仏語通訳を経て、1994年より現職。世界のホテルや旅館の「ホテルマン、環境問題、スパ(癒やし)」を主題に現場取材を貫いている。雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも務める。最新刊に『麗し日本旅、再発見!星野リゾート10の物語』(講談社)がある。
物語が生まれる“気”がいい場所 ホテルラウンジ利用術
- 神殿のような重厚感と水のせせらぎが心地良い
comforts.jp/gourmet/12618/